ビタミンF

原作:重松清
第一章
「セッちゃん」
脚本:荒井晴彦
演出:高橋陽一郎
いやぁ考えさせられたよ。
正直、この「ビタミンF」ってーのを見るかどうか悩んだんだけど、見てよかった!
雄介(役所広司)と和美(森下愛子)には、一人娘の加奈子(谷口沙耶香)がいる。
その加奈子から毎日のように聞かされる「セッちゃん」の話。
転校してきた途端に、クラス中から嫌われたというセッちゃんの話を、最初のうちは「かわいそうに」と他人事として聞いていた夫婦。
あまりに毎日加奈子がセッちゃんの事ばかり話すので、「もういいよ」とまで言った事もあったのに、それが実は加奈子自身の事だったと気付いた時の親の気持ち・・・考えただけで胸が張り裂けそうだった。

職場の同僚にも自分の娘は学校での事も話すし、何も心配のいらないいい子に育ってると自慢してた雄介。
なのにその娘が学校でいじめにあっていたなんて・・・。

途中で「そういうことじゃないのかな?」と読めたものの、ぜんぜん飽きる事はなくむしろ引き込まれた作品だった。
いじめられた時、しかも陰湿ないじめにあった時ほど、親には言えないものだと思う。
自分を一番愛してくれている親だからこそ、心配はかけられない。
加奈子ぐらいの年齢に達していれば、そう考えるのが普通だろう。
だからセッちゃんという架空の人物を作り出し、全部セッちゃんの話であるという事にして両親に話す。
他人事として話していた加奈子の気持ちも辛いもんがあるけど、やっぱ今となっては私は親の立場で見ちゃうんだよね。
運動会を「見に来なくていいからね」と加奈子が両親に言った時点で、セッちゃん=加奈子である事は確かだったんだけど、親は微塵もそんな事考えてなかったもんだからこっそり運動会を見学に行って愕然とするわけだ。
加奈子が話していたセッちゃんの話の通り、一人だけ創作ダンスの振り付けが教えてもらえなくて周りを見てオロオロしているのが我が子だったと知ったら・・・どんな親でも泣いちゃうよ。悔しくて・・・。
私だったら、そんな我が子の姿見続けるなんて出来ない。辛くて・・・。
何が原因で加奈子がいじめられるようになったのかがわからなかったけど、いじめなんて何でもないきっかけである日突然勃発し、そしていつまでも続くものだと思うから、ここまでの加奈子の辛かった日々を想像すると、加奈子は加奈子なりに精一杯頑張ってるなぁと・・・それしか言い様がない。
無視される、いじめられるとわかっていて学校へ行き続ける事は、何よりの頑張り。
ただ、その頑張りに本人が疲れてしまった時の事を考えると怖い。
あまり頑張らなくていいよと言ってあげたいけど、頑張る事で心の均衡を保っているのかもしれないし・・・。

雄介が加奈子のために流し雛を作ってあげて、それをあくまでもセッちゃんの身代わりに川に流そうと親子3人でサイクリングに出かける。
「これを流したからって、いじめがなくならないよ。そんな甘いもんじゃないし・・・。」と加奈子。
強いなぁ・・・この子。(・・,)グスン
そして最後までいじめられているのはセッちゃんだという娘の嘘に付き合ってあげている両親も強い。
いじめはしつこく続くかもしれないけど、きっと味方も現れる日が来る。
そう思いたいなぁ。

・・・と、真面目に感想を書き綴ってしまったのだが、これでいいのだろうか?(^。^;)

第2回
「パンドラ」
脚本:水谷龍二
演出:高橋陽一郎

ううむ、第一章の「セッちゃん」に比べると、ちょっとまったりした感じだった。
内容はやはり娘のことで悩む両親の苦悩っぽいのだが、あんまり共感はできなかったような・・・。(^。^;)
鏡に映った映像の多用とか、やたら孝夫(温水洋一)と陽子(内田春菊)の会話ばかりだったりだとか、あんまり趣味じゃなかったなぁ。

結局タイトルの「パンドラ」とは、娘の事で悩み、妻には夜のお誘いを拒否され(笑)、そういうやりきれなさから昔の彼女の連絡先を友人(利重剛)に聞いてしまったんだけど、その連絡先を書いた煙草の箱をたまたま買った木箱の中に入れて取れなくなってしまったことに繋がってるんだろうね。
自分のもやもやした気持ちを紛らわすために、昔の彼女を利用(って言葉悪いけど)しようとしたんだけど、それを踏みとどまる事が出来て良かったね・・・って話なん?(いかに散漫な気持ちで見ていたかわかるなぁ(^。^;))

しかし内田春菊さんって、こうやってみるとただのおばちゃんやなぁ。(^。^;)
もっとド派手なイメージがあったんだけど・・・。
第三章は大杉漣さん!これは期待してもいいかな?
第3回
「はずれくじ」
脚本:犬童一心
演出:高橋陽一郎
妻の淳子(りりィ)が入院している1週間ほどの間の、父・修一(大杉漣)と息子・勇輝(市原隼人)の話。
今回も何気にいじめが絡んでる話だったね。
勇輝が同級生と思われる二人組の言いなりになってて、あすかという女の子の部屋に自分の靴を投げ込む。
あすかは怒るわけじゃなく、後日靴を返してくれて、勇輝と一緒に川原でデートっぽい事してくれたりするんだけど・・・。
この川原のシーンで第一章に出て来た「流し雛」が岸に流れ着いてたね。
流し雛・・・どのぐらい流れてくれたんやろか?(^。^;)

でもさぁ、本当に最近のいじめって陰湿ね〜。
これが女ならまだわかるけど、男同士のいじめでこの陰湿さは何?
最初は靴を投げ込ませただけだったのに、次は靴と一緒にパンツ(もちろん下着の)まで投げ込ませるんだよ。
しかも「交換してください」って手紙付き。
そんなの見たら気持ち悪いに決まってるじゃん!
そこまでやられても、いじめてる少年たちに手出しができない勇輝。
ヘタに手出ししたら倍返しでやられそうだもんなぁ・・・悔しい気持ちはあっても手が出せない勇輝の気持ちもわからなくはない。

誤解を解こうとあすかの家に行っても、会う事すら拒絶され(当然)、それでも聞いて欲しくて二階のあすかの部屋へ屋根伝いに行こうとして落下、そして骨折。

うーん、第二章よりはマシだったけど、結局何を言いたかったのだろうか?
最後に宝くじを買う修一に淳子が「くじなんてほとんどハズレなんだから」と言ってたけど、その「はずれくじ」というのは何を意味しているのか私には理解できなかった。
勇輝がいじめの対象になってることが「はずれ」なんだろうか?\(?。?")ハテ?

エンディングは川原でギターを爪弾きながら歌うりりィだったよ。
これまたよくわかんないエンディングだったなぁ。(^。^;)
第四章
「ゲンコツ」
脚本:森岡利行
演出:柳川強
父親に「二度と戻ってくるな」と言われ家を出て25年。
実家のある大阪に転勤でやって来た雅夫(石橋凌)。
父親はすでに他界しているものの、墓参りもせずいまだに父親への反発を続けている中年男性が、若い少年たちのわがままな行動に怒りをおぼえ勇気を出し叱る事で、亡くなった父の気持ちを少しだけ理解できるようになるというストーリー。

子供の頃、父親から食らった「ゲンコツ」の重み、それを知ってるからこそ納得いかないことに簡単にキレたりしなかったのかもしれない。
でも今時の子供たちは「虐待」や「暴力」という言葉を恐れて、親が的確なところでガツンとやらなかったのが原因なのか、我慢や辛抱ができないんだよね。
そして一度キレてしまった子供たちに手が付けられない大人。
そういう構図がよく描かれていた。
注意したくても怖くて見て見ぬフリをしてしまう大人。
「それでいいのだろうか?」という自問自答を繰り返していた雅夫が、最後にどうしても許せなかったのが自分の仕事で扱っている自販機を蹴る少年たちの行動。
自分の仕事に対するささやかなプライドが、雅夫に勇気を与えたのかもしれない。
少年からパンチももらったけど、「口でわからんアホにはこうじゃ〜!」みたいな感じで遠慮なくよその子供を殴りつける雅夫には、昔ながらの頑固オヤジを見た気がしたよ。
すなわちそれが雅夫の父親そのものだったんじゃないかな?

少年が泣くまで叱りつけて、自分もひどい顔で帰宅した雅夫。
息子に「ケンカしたの?僕もケンカしていい?」と聞かれ、一瞬考え込んだ雅夫が「我慢できなかったらな。」と言ったのには、父親の威厳が感じられた。
こんな事があったから雅夫も家族を引き連れて、父親の墓参りに行く気になったし・・・。
親になって気付く親の気持ちって、こんなんかな〜と思いつつしみじみ見た作品でした。
でも、実際に今、いくら悪い事をしてたからといって、よそのお子さんをボコボコにしたら・・・たぶん問題になっちゃうんだろうなぁ。(^。^;)
第五章
「なぎさホテルにて」
脚本:岩松了
演出:高橋陽一郎
うーん、濱マイクの時の岩松了さん脚本・演出の回も「わからない」としか書けなかったんだけど、今回の「なぎさホテルにて」も脚本が岩松さんで私は理解できなかった。
難しい・・・。
役者やってる岩松さんは好きなんだけど、どうも脚本になると私のような凡人には理解できないらしい。(^^;ゞ

15年前に一度訪れた事のあるなぎさホテルに、家族を連れてやって来た達也(光石研)。
結婚1週間前(お相手は達也ではない)の彼女とホテルにやってきて、その彼女がホテルに設置されている未来ポストに10年後の達也へ向けた手紙を投函する。
その手紙を達也が読んだのかすら定かではない。
なのにその後結婚してたまたまホテルを訪れた彼女が、「もしも達也があの手紙を読んでしまったら・・・」とフォローする内容の手紙を書き、支配人(國村隼)に託す。
最初に泊まった時から15年後にホテルを訪れた達也に、支配人はその手紙を渡そうとするが手違いで妻・久美子(洞口依子)の手に渡ってしまう。
中身が気になりつい開封し読もうとした久美子、しかし文面はフランス語。
たまたま居合わせた宿泊客の文恵(藤谷文子)がフランス語を理解できると言う事で訳してあげる・・・って話なんだけど。
この文恵も結婚を1週間後に控えて、結婚相手ではない健治(水橋研二)とホテルに来てるのよね〜。
つまり達也が15年前に経験した事を文恵と健治が今やってて、久美子には読めなかったフランス語の文章を解読してあげたのが文恵。
まるで15年前の達也と一緒にホテルに泊まった女性が、久美子に一部始終を説明してあげてるような印象なんだよね。

そして文恵も未来ポストに投函するために10年後の健治に宛てた手紙を書いたんだけど、部屋に忘れてチェックアウト。
その手紙を引き取ったのが久美子。
「誰かに読まれちゃいけないから・・・」って、不思議な縁で同じホテルに宿泊した二組の男女が、妙にリンクしているようないないような・・・そんな不思議な話でしたが、やはり理解するには至らず・・・。m(_ _)m
第六章
「母帰る」
脚本:加藤正人
演出:高橋陽一郎
拓巳(三上博史)の父親・富夫(渡辺文雄)と別れた母親・幸枝(李麗仙)。
「長年連れ添った幸枝を一人で死なせる事ができない」と復縁を希望する富夫に対し、「別れて10年も経てば他人」「あの人は年老いた自分の世話を私にさせたいんでしょ」と壁を作る幸枝。
その間に立たされた拓巳の息子としての気持ち、そして自分も家に帰れば父親という立場だという事をあらためて認識する話なのかな〜。
これもちょっと掴みづらい話だった。
結局、幸枝は富夫の元に戻る事を決意したみたいだったし、家族の再生みたいなもんを伝えたかったのか・・・。

第五章で脚本を担当した岩松了さんが、酔っ払いの客役で登場。
ロシア人らしきお姉ちゃんを連れてやってきて、怪しげなロシア語を連発するオヤジ役。
岩松さんはこういう酔っ払い役が凄く似合うんだよなぁ。(笑)

第一章から第六章まで、どこかしらで出演者が繋がってるところはなかなか面白かったんだけど、単体で見た時にスムーズに理解できて見応えがあったのは、やはり第一章の「セッちゃん」だろうなぁ。

 

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